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世界の軍事力

日本の軍事力
日本の軍事力
(担当:小泉悠
 
 日本
-Japan-

 1.概観
 日本にとって、1945年8月の敗戦はただ軍事的敗北であったのみならず、それまでの軍国主義に対する痛烈な反省をも呼び起こした。
 結果、翌年1946年に発布された新憲法は、第9条1項及び2項において外交上のオプションとしての戦争の放棄と戦力の不保持を定めるという、徹底した平和主義をとることとなった。ここには日本の非軍事化を企図するGHQ(連合国軍総司令部)の意向が強く働いていたが、同時に当時の国民の強い支持があったことも確かである。
 しかし、ソ連との対立が深まりつつある中で1950年に朝鮮戦争が勃発すると、アメリカは日本を西側陣営の一部として再軍備させることを決め、同年、警察予備隊が発足した。警察予備隊は2年後の1952年に保安隊と改称され、さらに2年後の1954年、自衛隊が発足した。


  1)軍事力の概要
 上記のような経緯から、日本の国防方針は戦後一貫して「
専守防衛」とされており、核兵器や弾道弾などの攻撃的兵器は保有できないことになっている(ただし、日本は高いロケット技術を有し、原子力利用の経験も長いことから、比較的短期間で核戦力を保有することが可能であると見られている)。また、周辺諸国の軍隊と較べればさほど規模も大きくなく、政府が定めた武器輸出三原則によって、武器輸出も行っていない。
 しかしながら、同時に自衛隊はアジアでもっとも近代的な装備を有する軍隊であり、軍事費は世界第2−3位である。特に、島国である上、海外領土も持たないため、海上兵力と航空兵力が重視され、充実している。このため、依然としてアジア諸国には日本を軍事的脅威と見なす声が強いほか、アメリカにも日本の軍事大国化を懸念する勢力が伝統的に存在する(いわゆる「瓶の蓋」理論など)。
 また、日本はアメリカと並んで世界で唯一、国防白書を毎年発行している国であり、予算などの透明性も高い。

 2)近年の動向
 冷戦崩壊以降、日本でもPKOへの参加など安全保障に積極的な動きが動きが生まれ、特に北朝鮮が軍事的脅威として国民に認識されるようになると、従来の憲法9条下での平和主義路線に対する信頼が揺らぎ始めた。
 また、90年代以降の長期的な経済停滞による社会の右傾化もこれに拍車をかけた。
 この結果、日本は空中給油機や偵察衛星、大型揚陸艦、ヘリ空母の導入といった質的戦力向上と同時に、有事法制の整備や交戦法規の整備といった法制面における軍事化を進めており、長期的には憲法9条の改正も考えられる。
 さらに2002年から始まったアフガニスタン・イラクに対するアメリカの軍事行動では、自衛隊は陸海空自衛隊の派遣を行い、2004年6月には

 また自衛隊自体の動向としては、2つの変化が挙げられる。
 一つは、ソ連を意識した従来の編制から、ゲリラや特殊部隊などの潜入破壊工作に備えた編制への変化であり、第二は、陸海空の3自衛隊を、アメリカのように統合軍として運用する決定が為されたことである(詳しくは「組織」の項で述べる)。
 また、従来から自衛隊の購入する装備品のあまりの高額さが業者との癒着によるものとの指摘があり、入札の透明性の強化や、装備品のコスト・ダウンが図られている。

 
日本の軍事力
兵力 単位:万人
正規現役 23.3
予備 4.38
合計 27,68
軍種別 単位:万人(現役のみ)
陸上自衛隊 14,8
海上自衛隊 4,4
航空自衛隊 4,5
軍事予算(2004年度)
総額 4,9265億円
GDP比 0,995%
国家予算に占める割合 6,0%
伸び率 0,3%
兵役
志願制
主な同盟
日米安全保障条約
現在係争中の紛争
北方領土問題竹島問題尖閣諸島問題
 注:軍事予算は、平成15年度防衛白書によった


 2.組織
 自衛隊は、陸上自衛隊(JGSDF:Japan Ground Self-Defense Force)、海上自衛隊(JMSDF:Japan Maritime Self-Defense Force)、航空自衛隊(Japan Air Self-Defense Force)からなっている。それぞれの自衛隊のトップには幕僚長がおり、3人の幕僚長が集まって統合幕僚会議を構成する。
 しかし、現在のところ、3つの自衛隊はそれぞれ個別に運用されており、連携に欠ける部分がある。
 そこで、3人の幕僚長の上に統合幕僚長と仮称されている指揮官を置き、この指揮官のもとに3つの自衛隊を統合して運用することが決まった。
 たとえば、現在の制度では首相の命令を受けた防衛庁長官が、3人の幕僚長にそれぞれ命令を与えることになっている。しかし、統合軍制度のもとでは、防衛庁長官からの命令を統合幕僚長(仮)が受け取り、3人の幕僚長を指揮する。
 これにより、自衛隊の戦力は陸海空の垣根を越えて一元的に指揮されることになり、より効率的な作戦行動を行うことが可能となるとされている。
 


 
3.戦力
 1)
海上自衛隊
 あまり知られていないが、海上自衛隊(JMSDF:Japan Maritime Self-Defense Force)は世界でも有数の規模と実力を誇る海軍である。
 海上自衛隊は約55隻の水上戦闘艦艇と16隻の潜水艦を保有しているが、これはイギリスやフランスを上回る数字である。保有する艦艇の大部分は世界的に見て優秀な性能を持ち、整備状態もよい。
 一方、専守防衛政策によって日本近海での行動のみを想定しているため、イギリスやフランスが保有するような航空母艦や原子力潜水艦は保有していない。
 また、第二次世界大戦において、潜水艦による通商破壊で国家経済が崩壊した経験から、海上自衛隊は対潜水艦作戦(ASW:Anti Submarine Warefare)を重視している。このため、世界でも類を見ない強力な対潜航空部隊を保有し、さらに16年度予算では対潜ヘリコプター母艦を建造することが決定された。
 
 ・付記
 海上保安庁も日本の海上戦力の一部である。
 日本の海上保安庁(Japan Coast Guard)は沿岸警備隊として世界最大の規模を有しており、有事の際には自衛隊法によって海上自衛隊の指揮下に入る。
 一方で、海上保安庁法では軍隊として機能しないことが定められているため、軍事作戦には参加しないことになっているが、北朝鮮の工作船事件などを契機に急速に準軍事組織としての能力を獲得しつつあり、海上自衛隊や他国の海軍・沿岸警備組織などとの連携も深めている。

 
海上自衛隊の戦力
兵力
4万4000人
主要艦艇
主要水上戦闘艦艇 54隻(20,3万t)
潜水艦 16隻(4万t 他に練習艦2隻)
輸送艦 8隻(3万t)
総計
140隻(39,8万t)
(写真提供:海上自衛隊)


 2)
航空自衛隊
 航空自衛隊(JASDF:Japan Air Self-Defense Force)は約370機の戦闘機を保有し、日本の防空と日本へ来寇する敵艦隊の迎撃を主な任務とする。
 全体として性能の高い航空機が高い整備状態で維持されており、特に日本全土を覆う防空レーダー・システムとあわせて、高い防空能力を有する。特に約200機保有しているF−15戦闘機(写真)はアメリカ空軍の主力機であり、これを保有している国はアジアでは日本だけである。
 また、従来の航空自衛隊は海上の敵艦隊に対する攻撃以外には海外の敵国領土を攻撃する能力を持たなかったが、近年、空中給油機や精密誘導爆弾が導入されることが決定し、敵ミサイル基地などへの爆撃が可能となる見通しである。


兵力
4,5万人
主要航空機
戦闘機 307機
戦闘爆撃機 59機
輸送機 56機
総計
559機(うちヘリコプター57機。練習機は含まない)
 (写真提供:航空自衛隊)


 3.
陸上自衛隊
 海国であり、海外に兵力を送らないことを建前とする日本では、陸上自衛隊の優先順位は常にあまり高いものではなかった。
 このため、装備は諸外国にくらべて立ち遅れが目立ち、また人員の不足している部隊も多い。特に、先進諸外国の陸軍では歩兵といえども機動性と火力を有する装甲車やヘリコプターを活用する機動歩兵として運用されているのに対し、陸上自衛隊は圧倒的に機動力が不足している。
 そこで、2001年度から始まった中期防衛力整備計画(中期防)では、師団の旅団化などによって人員を削減する一方、部隊の機動力を高めることを目指している。
 また、従来の陸上自衛隊はソ連軍のような大規模な敵が上陸した場合を想定して編制されていたが、冷戦崩壊によってその可能性が低下したことで、少数のゲリラや特殊部隊の上陸を重視するようになり、対ゲリラ特殊部隊が編制された。

兵力 単位:万人
現役 14,8
予備 3,7
即応予備 0,5
戦闘車両 単位:両
戦車 1020
装甲車 980
攻撃ヘリコプター 89機
 (写真提供:陸上自衛隊)

 文責:小泉悠

 
関連リンク
防衛庁 日本の防衛庁のサイト
平成15年度版防衛白書 防衛白書のオンライン版。無料
陸上自衛隊 陸上自衛隊のサイト
海上自衛隊 海上自衛隊のサイト
航空自衛隊 航空自衛隊のサイト
海上保安庁 海上保安庁のサイト
 

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